「山形女性医師ネットワーク」のお知らせ

今春の日本内科学会年次講演会で男女共同参画企画公開シンポジウムが開催されました

春は各医学会の学術集会のシーズンの1つですが、今年4月12日~14日に東京で行われた第110回日本内科学会講演会で、日本内科学会としては初めて、男女共同参画に関する公開シンポジウムが開催されましたので、出席して参りました。

シンポジウムは、Born Female: A Disadvantage from Birth?「女性に生まれると、生涯不利なのか?」と題して、海外から2人の女性を招き、国内の大学医学部で教授・教官として活躍する3人の女性医師もシンポジストとして加わり、国内の大学医学部の女性教授2人(1人はシンポジスト兼)が座長をつとめられました。約500人以上が出席し、ざっと8割以上が女性でした。

まず、基調講演として、UN Women(ジェンダー平等と女性のエンパワーメントのための国連機関) 戦略パートナーシップ部 部長のKristin Hetle氏が、日本の男女共同参画の現況と解決すべき問題点について講演されました。彼女は、ノルウェー国籍で、コミュニケーション戦略やメディア研修の企業のCEO、ノルウェー労働省の広報責任者、国連人口基金(UNFPA)の報道サービス部長などをつとめ、現在はUN Womenで、経済界への働きかけや、市民社会との交流を監督されているとのことです。ノルウェーをはじめとした北欧では、クオータ制(割り当て制)で政治界から女性の任用が促進され、それが社会の活性化をもたらしていることを説明されました。日本は、政治・経済活動の指導的立場についている女性の割合が非常に少なく、2012年10月のスイスのシンクタンク「世界経済フォーラム」の発表では、日本における男女格差は、世界135ヵ国中101位と非常に大きく遅れていることが紹介され、ぜひクオータ制の導入を図るべきだと提言されました。

次に、南アフリカ出身の医師で、その後アメリカ合衆国で小児内分泌・糖尿病の研究を行い、現在はピッツバーグ医科大学小児病学科教授のDorothy J. Becker氏が、自らの体験を発表し、南アフリカでは、女性医師が非常に少なく、医師になる教育を受けるのも大変であったこと、アメリカに来てみると男女機会平等ですっかり違っていではじめはびっくりしたが、それでも、現実には男女間の格差がないとは言えないことなどをお話しされました。Becker先生は、女性も男性も、まず、医師として・研究者としてベストを尽くすこと、そこから自身の向上を図っていくことが大切だと、motivationを保持することの重要さを強調されました。また、クオータ制については、「もし私が、女性だから教授にしてあげるといわれても、それはnoだ。自分自身の力が評価されて、教授になることで価値がある」と話されました。

女性にあらかじめ一定の割合のポストを割り当てるクオータ制。政治の世界では世界的にかなり行われいて、女性議員の割合の増加には非常に有用なことがわかっています。日本でも、「2030運動」として、2030年までに意思決定機関の30%に女性が任用されることを、政府が主導して、政治・経済の各界に働きかけています。日本循環器学会も2012年から各地区評議員定数の10%を女性に割り当て、また今年3月に横浜で開催された第77回日本循環器学会では、座長の8%が女性となり、それまでの約3%からかなり増加しました。議員や学会役員などに女性が任用されるよう推進するのには、クオータ制は大変有用と考えられます。また、専門医の取得に必要な、専門医研修病院への採用が、男性優先・男性独占にならないよう、女性レジデントのクオータ制があるのが望ましい、と筆者は考えます。
ただ、教授やCEOなど、「オンリーワン」のポストは、割り当てではなく、そのポストにふさわしい人がなるもので、クオータ制には不向きであり、むしろ、男女を問わず、機会が均等に与えられることが適切ではないかと、考えるのでした。

日本の各大学医学部で教授・教官として活躍されているシンポジストの各女性医師は、大変生き生きとはつらつとされていて、「Born Female: A Disadvantage from Birth?」という言葉には全く当てはまらないという印象で、むしろそれが一番うれしく、頼もしく思われました。少なくとも、シンポジストの各先生には、機会均等などが実現されているが、一般の女性医師ではそこまで恵まれていない人が少なくはなく、それがこれからの解決すべき点であろうと思われます。日本における女性医師の現実問題は、国連レベルでの全世界に対する男女共同参画運動とは共通するところもあるものの、違う側面も多々あり、自分たちの問題を自ら解析し解決していくプロセスが大事なのだとあらためて感じました。

第110回日本内科学会講演会では、このシンポジウムの他に、専門医部会主催女性医師支援ワークショップとして、ワークショップ「女性内科医が生き生きとワーク・ライフ・バランスを保ちながら仕事を続け社会に貢献するための提言」が開催され、また、展示スペースで、ブース展示「女性医師に関するワーキング活動」と復職支援相談窓口が開設されました。

また、前述の3月15日-17日に開催された第77回日本循環器学会学術集会では、シンポジウム15 離職リスクを避けるための課題と解決法、委員会セッション10 第3回男女共同参画委員会セッションが開催されました。