「山形女性医師ネットワーク」のお知らせ

「第14回山形女性医師ネットワーク:医学生・研修医との集い」を開催しました

 先に御案内いたしましたとおり、1月24日(木)17:00から、「第14回山形女性医師ネットワーク:医学生・研修医との集い」を、山形大学医学部内の山形医学交流会館地図)にて開催しました。今回の集いは、「平成24年度山形県委託事業 女性医師サポート事業」のうち「女性医師と女子医学生等のつどい」事業にて、開催いたしました。また、山形大学医学部から御後援をいただきました。

 「山形女性医師ネットワーク」では、「山形女性医師ネットワーク:医学生・研修医との集い」として、2006年より毎年冬に特別講師を招いての講演会(2006年3月2007年3月2010年3月2011年1月2012年1月)を、さらに、2008年3月2009年3月には拡大講演会として「山形女性医師ネットワーク:医学生・研修医との集い」-シンポジウム「女性医師が仕事を続けるためにⅠ・Ⅱ」を開催してきました。また、2007年からは「医学生・研修医との集い」のサマーバージョンとして、毎年7月に2007年2008年2009年2010年2011年2012年と、気軽な茶和会形式の「サマーパーティー」を開催してきました。

 今回は、女性医師に限らず、すべての医師の勤務環境やワークライフバランスについてをテーマに、講演会を企画しました。山形大学大学院医学系研究科 高次脳機能障害学講座教授で、山形大学医学部附属病院卒後臨床研修センター長の鈴木匡子先生から、「男女医師のワークライフバランス~山形大学医学部の支援制度の紹介~」の御講演をいただき、県内病院に勤務する男女医師2人から、「私のワークライフバランス ~医師としての実践~」として子育て真っ最中の体験談をいただきました。参加者は、講演演者の医師3名、山形大医学部医学科の1年から4年の学生17名(うち男性2名)、山形大学医学部附属病院の女性研修医2名、会員女性医師6名の他に、山形県健康福祉部、病院事業局から5名の、計33名でした。

 御来賓の山形県健康福祉部長 大泉享子様より御祝辞をいただいたあと、山形大学大学院医学系研究科 高次脳機能障害学講座教授で、山形大学医学部附属病院卒後臨床研修センター長鈴木匡子先生から、「男女医師のワークライフバランス~山形大学医学部の支援制度の紹介~」の御講演をいただきました。鈴木教授は、本邦では、現在、新規医籍登録数や医学部入学者の3人に1人は女性であり、若い女性医師が年々増加していること、ただ、2007年における本邦の女性医師の割合は20%弱で、イギリス・フランス・ドイツの約40%、アメリカの約30%、東欧・北欧諸国の50-60%に比べればまだ少なく、今後女性医師増加への対応については、これら諸国の対策を学ぶ必要があること、また本邦では、とくに皮膚科・眼科・小児科・麻酔科・産婦人科で女性医師の割合が高く、ことに皮膚科・産婦人科では34歳未満の医師における女性の割合が約60%にも上っていることなどを紹介されました。女性の就業率が30歳代の子育て世代で低下し、40歳代に回復する「M字カーブ現象」は、一般女性と同様に女性医師でも認められ、とくに女性医師では30歳代前半よりも後半の就業率が低下するのが特徴であり、妊娠・出産・子育てと医師の仕事が両立できるように支援することが必要であること、医師の仕事の特殊性、すなわち、高度の知識・技術が求められること、深夜勤務・長時間勤務・時間外勤務など勤務時間が不規則であることへの配慮が必要であることを指摘されました。
 山形大学医学部では、医学部教員数の14%が女性で、全国医師での女性の割合(17%)と大きな差はないが、教授・准教授などの上級職での割合はまだ少ないとのことです。山形大学全体で男女共同参画事業に取り組んでおり、医学部での女性医師サポートは、①働き続ける、②再び働く、③意識改革と裾野拡大、の3本柱で進めているそうです。「働き続ける」ための仕事へのサポートとしては、短時間勤務制度(短時医員(非常勤)・短時助教(常勤))、女性研究者の仕事の事務的な支援などをしてくれる研究継続支援員制度、学外から文献検索やe-learningによる学習や書類作成などができるインターネットの活用、相談者・ロールモデルとしてのメンター制度を行っており、とくに短時医員は週30時間までの勤務で時給制(時給1400円)で、国民健康保険に自分で加入する必要があるが当直無しであり、現在女性13名、男性1名がこの制度を利用して勤務しているとのことです。また、育児へのサポートとして、24時間保育の院内保育所を開設しており、定員30名でほぼ満員であり、1歳未満児を中心に増員が予定されており、また病児保育も設置準備中とのことです。
 「再び働く」としては、休業後の復職支援や、総合診療医を目指して専攻科以外の研修にためのリフレッシュ医学教育を行う総合医学教育センターと、中断してしまった専門研修や博士号取得などの支援をする高度医療人研修センターが紹介されました。「意識改革と裾野拡大」としては、女性研究者と学長・学部長との懇談会が毎年1回開催されており、今年度も2月14日に予定されているとのことです。また、高校生に医学の魅力を伝えるスーパー医進セミナー(県主催に協力)やオープンキャンパス、医学生を対象にキャリアパスについて考える医学部キャリアアップセミナーが開催されているとのことです。最後に、参加した学生や研修医に向けて、医師としての自分のキャリアアップを意識した将来設計を考えるようにとのアドバイスをいただきました。
 
 次に、県立中央病院腎臓内科に勤務する女性医師から、「私の双子育児と仕事復帰」と題して体験談をいただきました。医師11年目で結婚し、翌年双子を妊娠し、切迫早産となったため予定よりも早く産休に入ったこと、1年ちょっとで育児休業から復帰しようと思っていたものの、保育園に預けた双子のどちらかが熱を出したり風邪を引いたりで2人とも元気な日が思いのほか少なく、職場復帰は産後1年11ヶ月になったことなど、予定外の出来事だらけであることが話されました。現在は週3回勤務の「短時間勤務」で、外来診療を担当し、入院診療や当直は免除されているとのことです。勤務の日は6時前に起きて、朝食の準備をし、子供と朝食を摂って、子供を保育園に預けてから8時45分に出勤、18時頃保育園に迎えに行き、19時頃帰宅、夕食を作って食べるのは20時頃、家事をして22時頃子供を入浴させ23時に子供を寝かせたあとも家事をやって就寝は1時頃とのことです。双子なので、忙しいときは1人をおんぶし、もう1人を前にしょって家事をするということで毎日の苦労がしのばれます。切迫早産で入院したり、子供が熱を出したり病気になったりして病院にかかる体験をしたことで、患者さんの気持ちがわかるようになったこと、社会人として成長できたと話されたのが印象的でした。自分が独身だった頃は、子育て中の女性医師を見てもその苦労が実感できなかったけど、今は自分で体験してみて、子育てが落ち着いた後は他の子育て中の医師にいろいろ協力しようと思っているとのことでした。現在、職場復帰して仕事をやっていられるのは、病院の上司・同僚、スタッフみんなのおかげと感謝の言葉で締めくくられました。

 最後に、山形大学医学部の第一内科勤務の医師7年目の男性医師から、「理想のワークライフバランスを目指して」と題して講演をいただきました。妻は2年下の他科の医師で、一昨年結婚して現在結婚3年目、昨年8月に子供が生まれ、妻は昨年6月に産休に入った後は休職中とのことです。循環器内科医師である演者は子育てもできるだけがんばっているつもりとのことですが、ある1週間のスケジュールでは、当直1回、日当直1回(日曜)、土曜も夕方まで他病院で診療、平日の帰宅は20時過ぎがほとんどで、育児・家事ができたのは、週4日、それも20分~60分のみでした。育児・家事に積極的に参加したいが、家に帰ることができる時間的余裕が少なく、「男性も女性も、仕事と家庭を」が難しい、妻の仕事復帰を望んではいるが、現在の状況では仕事復帰すると妻に更なる負担をかけてしまうのではないか?、具合の悪い患者さんがいる場合はライフ側にシフトできない、の悩みをあげられました。今後の対策として、「家事・育児を担う妻をパートナーに持つ男性医師」を基準として、医師の長時間かつ不規則な労働を見直すこと、医師増員や女性医師の復職支援による医師不足解消、労働時間や当直回数の軽減、主治医制に代わるシフト制などを導入すること、「男性も女性も、仕事と家庭を」という方向に意識を変えていくことは不可欠で、日本社会、医学界のジェンダー問題について、医学部の卒前・卒後教育で取り上げること、を提案されました。
 「育児」「家事」については男性が担える部分も大きく、女性医師のみを支援するのでは、旧来の男女の役割分担に固執し、男女間の労働性、キャリアアップなどにおける格差が大きくなるばかりであり、男性医師を含めたすべての医師のワークライフバランスを「ライフ」側にシフトさせていくことで、医師の仕事と自己の生活に対する満足度を高めることが可能と考えられ、医師全体の問題として取り組んでいくことが重要であると指摘されました。現在、第一内科では、チーム制にして1人の医師にかかる負担を軽減し、土日祝日は当番チームが他のチームの患者も受け持って、休暇を取得しやすいようにしており、さらに平日に定時帰宅できる日を設定できるよう検討中とのことです。今後、演者は、早く帰宅できる日はなるべく早く帰る、家事・育児に積極的に参加する、休暇を取得しやすい職場雰囲気を作り上げる、ワークライフバランスの職場での啓蒙をして、妻の職場復帰を支えていきたいと話を結ばれました。
 参加した男子学生からは、チーム制や、土日祝日の当番チーム制は、共働きをするうえで非常に魅力的であり、他の科ではどうなっているかとの質問がありました。科ごとに異なっているようで詳細は把握していないとの回答でした。女性研修医からは、共働きの秘訣は?との質問があり、医師として互いに尊重しあうこと、と回答がありました。

 今回は、山形女性医師ネットワークの主催としては、初めて、山形大学医学部内で「医学生・研修医との集い」を開催させていただきました。多くの学生さんに参加いただき、また山形大学附属病院研修医の方にも参加いただけて、大変良かったと思います。また、山形女性医師ネットワークの集いの講演会で、男性医師から御講演をいただいたのも初めてでしたが、男性医師の立場からのワークライフバランスの提言は非常にうれしく、今後ますます男性医師・男子医学生の皆様の参加が増えますよう、活動していきたいと思います。
 今後も、このような集いを年に一回は開催していきたいと思っております。御参加の皆様、本当にありがとうございました。