「山形女性医師ネットワーク」のお知らせ

山形県主催「病児・病後児保育事業に関する勉強会」に参加しました

以前御案内しましたとおり、昨日3月20日(土)13:30~16:00に、山形市の霞城セントラル内の山形市保健センター視聴覚室において、山形県子ども政策室子育て支援課の主催で「病児・病後児保育事業に関する勉強会」が開催され、参加してまいりました。

医師に限らず、仕事をしながら子育てを行う時、病児・病後児保育は非常に重要です。しかし、現在山形県内では、病児保育を行っている施設は鶴岡市の1施設のみ、病後児保育を行っている施設は山形市・天童市・南陽市・新庄市・酒田市にそれぞれ1施設の計5施設のみと非常に少ないです。また、「体調不良時対応型」と言って、普段通っている保育所において、保育中に微熱を出すなど体調不良となった児童をその保育所内の医務室等で一時的に預かる施設は、鶴岡市に9施設、酒田市に3施設、庄内町に2施設、三川町に1施設、米沢市に4施設の計19施設あるとのことですが、山形市近辺では1箇所もないそうです。

そのため、山形県子ども政策室子育て支援課が、病児・病後児保育を実施する施設の拡充に向けた取り組みの一つとして、必要性・効果・実施に向けた課題などについての勉強会を開催しました。

まず、全国病児保育協議会の会長で、大阪市旭区の社会医療法人中野こども病院院長の木野稔先生から「究極の育児支援・病児保育とは ~その必要性と課題~」と題した講演がありました。日本の育児環境の現況は、核家族化、少子化により子育て経験が少ない、地域社会における相互扶助機能の崩壊、就業形態の変化ことに非正規雇用の増加などから、ワークライフバランスの実現には程遠く、「ワークライフコンフリクト」という状況であり、病児・病後時保育は「子育てのセーフティネット」として不可欠と考えられます。

病児病後児保育事業は、国庫補助事業として行われており、実施主体は市町村ですが、市町村が適切と認めた者としてNPOが行っているところもあるそうです。病児対応型・病後児対応型・体調不良児対応型の3つの形態があり、対象児童は病児対応型・病後児対応型では、市町村が必要と認めた小学校3年生までの児童となっています。施設の要件として、病院・診療所、保育所等に付設された専用スペースが必要で、看護師(准看護師・保健師・助産師を含む)が利用児童おおむね10人に1人以上、保育士が2利用児童おおむね2人に1人以上必要とされます。病児対応型・病後児対応型では、対象児童をかかりつけ医に受診させた後、保護者と協議して受け入れを決定する。医療機関でない施設が病児対応型を実施する場合には、診察医師が入院の必要性はない旨を署名した連絡票を保護者が持参することとなっています。

木野先生が取りまとめた、平成20年度の国庫補助ベース病児・病後児保育事業実施状況と、全国病児保育協議会の実態調査によれば、全国では保育定員が4-5名の中規模施設が多いものの、年間利用率はどこもほぼ定員の50%であり、補助金をもらってはいても、経営としては64%が赤字、32%が概ね+-ゼロ、黒字が4%で、経営は非常に厳しく、小規模施設よりも大規模施設の方が赤字の割合が高い実情とのことです。なお保育料は全国ほぼ1日2000円で、これに給食実費300-500円が加算されます。予約保育の約3割がキャンセルとなりますが、キャンセル料は9割以上の施設ではとっていないようです。また、制度としてあらかじめ事前登録しておく様になっていますが登録料はほぼどこでも無料としているそうです。

木野先生の運営される「病児保育室きしゃぽっぽ」では、定員4人で運営されていますが、利用者が多いときには保育士を増やして最大1日9人まで受け入れているそうです。利用児童は生後3ヶ月~小学校低学年までですが、1歳が最も多く、3歳以下で75%を占め、1回あたりの利用日数はほとんどが1日で多くとも2-3日、病気は上気道炎が8割以上で、急性気管支炎、感染性胃腸炎の上位3疾患でほぼ9割を占めるそうです。年間登録数は約350人で、実際に利用されるのは約140人とのことでした。利用申込が満杯の場合に近くの病児保育施設・病後児保育施設へ紹介することもあり、連携の重要性を話されておられました。

次に、事例発表として3つの発表がありました。まずは、山形県内で最初で唯一の病児保育を行っている、鶴岡市の医療法人なごみ会産婦人科・小児科三井病院内「カトレアキッズルーム」の三井圭子氏より、開設までの経緯や運営の状況のお話がありました。鶴岡市からの委託事業として、2004年2月から病後児保育を開始し、2008年4月からは「鶴岡市病児・病後児保育事業」として病児の受け入れも開始されました。スタッフは看護師1名、保育士1名で、日曜・祝日・年末年始を除く、午前8時~午後6時まで、定員2名、生後2ヶ月~小学3年生までが対象で、利用料1日2000円(食費300円別)(低所得者への減免あり、無料または1000円で、市が負担)で運営されており、登録者は404名、年間利用延べ人数は200-300名で、経営は、補助金と利用料の収入と、看護師および保育士の人件費・光熱費・保険料などの支出でトントンで、日に2度ほど回診する医師に対してはペイできていないのが現状とのことです。

次に、天童市市民部子育て支援課の母子保健係から、2008年6月に開設された、病後児保育室「きらきら」について発表がありました。天童市は「子育て日本一」に挑戦しており、天童市民病院に隣接した「保健センター」内に、市が事業主体となって病後児保育室「きらきら」を設置し、乳幼児健診・子育て相談などとともに総合的な子どもの健康支援を目指しているとのことです。スタッフは看護師1名、保育士1名を配置するため、看護師2名と保育士3名シフトで勤務し、日曜・祝日・年末年始を除く、午前8時~午後6時まで、定員2名、1歳~小学3年生までが対象で、利用料1日2000円(食費300円別)で運営されています。昨年8月に開設したばかりで登録者は93名、利用者実数21名、延べ利用者数60名、月平均利用者数は6.5人とのことです。定数が2人なので、実際は空いているのに「満杯なのではないか」と思っている保護者が多いことが懸念され、市報や乳幼児健診で広報を進めていくとのことでした。

最後に、天童市病後児保育室「きらきら」を利用された保護者(母親)の御一人が体験をお話されました。育児休暇が明けてフルタイムの勤務に戻った後、お子さんが風邪・アデノウイルス感染症・ウイルス性胃腸炎と何回も病気になり、有給休暇もなくなってしまい、仕事を辞めるしかないと思っていたとき、乳幼児健診のときに登録していた病後児保育を思い出して、思い切って保育に預けてみたこと。最初に預けた日はとても心配だったけど、迎えに行ったとき子どもさんがとても機嫌よく、日中の様子をスタッフから教えてもらい、メモももらって大変安心したこと。病後児保育のおかげで仕事を辞めなくて済んだこと。同じ職場の他の市町村に在住の人から「天童は病後児保育があってうらやましい」と言われたことなどを発表されました。 本当に感銘を受けました。 

特別講演の木野稔先生が、「全国のどこの市町村に住んでいても同じように、病児病後児保育という育児支援サービスが受けることができるように活動を続けている」とおっしゃっていましたが、この面ではかなり立ち遅れている山形県でも、どの市町村でも病児病後児保育が受けられるよう、是非整備が進んでいって欲しいと思いました。また、全国の施設の6割以上が赤字であるということは、もっと公的な資金支援を充実させる必要があると思われます。みんなで連携して公的支援の拡充を求めていくことが大事だと思いました。